鍼灸
概要
鍼灸は、東洋医学の理論に基づき、鍼(はり)や灸(きゅう)によって身体の機能を調整する治療・養生法です。
経絡(気と血が巡る通路)上の経穴(ツボ)に刺激を与え、気血水の巡り、自律神経、筋緊張、血流、痛覚調整などに働きかけることを目的とします。
日本では国家資格を基盤とする医療系職種として位置づけられ、医療現場やスポーツ、リハビリ、予防ケアなど幅広く活用されています。
背景と成り立ち
鍼灸の起源は中国の古典医学に遡り、『黄帝内経』などに理論が体系化されています。
日本には古代に伝来し、江戸期以降は独自の発展(やさしい刺鍼、腹診重視、細い鍼の使用など)を遂げました。
現在では、伝統理論と西洋医学的研究(神経生理学、疼痛学、自律神経研究など)が交差する分野として発展しています。
基本理論(コアコンセプト)
1)気・血・水の調整
健康とは、気・血・水が過不足なく巡っている状態とされ、鍼灸はその流れを整える手段と考えられます。
2)経絡と経穴(ツボ)
身体には気血が流れる経絡があり、そこに点在する経穴に刺激を与えることで全身の調和を図ります。
局所だけでなく、離れた部位への遠隔効果が特徴です。
3)陰陽・虚実の評価
冷え(陰)と熱(陽)、不足(虚)と過剰(実)といったバランスを評価し、刺激の強さや方法を調整します。
4)全身調整
痛みや症状のある部位だけでなく、全身の状態(睡眠、消化、ストレス、体質)を考慮します。
主な手法
鍼(はり)
• 使い捨ての細い鍼を皮膚に浅く挿入
• 刺激は軽微〜中等度まで調整可能
• 痛みはほとんどない場合が多い
灸(きゅう)
• 艾(もぐさ)を燃やして温熱刺激を与える
• 冷え、筋緊張、自律神経調整に用いられることがある
• 直接灸、間接灸、温灸などの方法がある
電気鍼(パルス)
• 鍼に微弱電流を流し、筋緊張や疼痛を調整
• リハビリやスポーツ分野で活用されることがある
置鍼・円皮鍼
• 短時間の留置や小さな鍼で持続刺激を与える方法
診断の視点
鍼灸では次の観点から状態を評価します。
• 望診:顔色、舌の状態、姿勢
• 問診:睡眠、食欲、便通、冷え、汗、月経、ストレス
• 切診:脈診、腹診、筋緊張、圧痛点
• 動作観察:可動域、歩行、姿勢バランス
適用される場面(一般的な例)
• 肩こり、腰痛、首の痛み
• 頭痛、顎関節症
• 自律神経の乱れ(不眠、動悸、めまい)
• 消化不良、過敏性腸症候群(IBS)
• 月経痛、PMS、更年期症状
• ストレス関連症状
• スポーツ障害、筋疲労
• リハビリテーションの補助
強み
• 身体への負担が比較的少ない
• 痛みの調整や自律神経調整に有効な場合がある
• 急性期〜慢性期まで幅広く対応可能
• 西洋医学と併用しやすい
• 予防・メンテナンスとして活用しやすい
限界・注意点
• 骨折、重度の神経障害、感染症などの代替にはならない
• 出血傾向(抗凝固薬使用など)では慎重対応が必要
• 妊娠中は避けるべき経穴がある
• 施術者の技量や流派により手法が異なる
• 効果には個人差がある
標準医療との関係
鍼灸は日本の医療制度において認められた専門職であり、整形外科、内科、リハビリテーションなどと併用されることがあります。
ただし、診断、検査、緊急対応、手術、薬物療法の代替ではありません。
強い痛み、しびれ、麻痺、発熱、出血などがある場合は、まず医療機関の受診が優先されます。
関連分野
• 東洋医学 概論
• 漢方医学・薬膳
• オステオパシー
• カイロプラクティック
• ヨーガ療法
• 温熱療法
• キネシオロジー



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