食事療法 概論
概要

食事療法は、食べ物・食べ方・食環境を整えることで、病気の予防、症状の緩和、回復の支援、そして健康の維持・増進を目指すアプローチです。
薬や施術だけに頼るのではなく、日常の食生活そのものを治療的資源として活用する点に特徴があります。
単なる「栄養管理」ではなく、身体・心・生活・文化・環境との関係を含めた包括的な実践として位置づけられます。
背景と位置づけ

食と健康の関係は古代から重視されてきました。中医学の「薬食同源」、アーユルヴェーダの体質別食養生、マクロビオティックの陰陽論、近代栄養学の発展など、多様な体系が食事療法を支えてきました。
現代では、生活習慣病の増加、慢性炎症、腸内環境、メンタルヘルスと食の関連などが注目され、医療・栄養・統合医療の分野で重要な基盤とされています。
基本原則(コアコンセプト)

1)個別性
年齢、性別、体質、生活リズム、職業、既往歴、消化力、アレルギー、文化背景などによって「最適な食」は異なります。
画一的な食事ではなく、個人に合わせた設計を重視します。
2)予防と土台づくり
食事は、病気になってからではなく、日常の予防と身体の土台づくりとして機能します。
血糖、炎症、腸内環境、ホルモン、免疫などの基盤を整えることが目標です。
3)全体性(ホリズム)
栄養素だけでなく、次の要素を含めて考えます。
• 食材の質(加工度、産地、鮮度)
• 調理法(火の入れ方、発酵、油の使い方)
• 食べる環境(時間、雰囲気、ストレス)
• 食べ方(よく噛む、腹八分目、規則性)
4)「治す」より「整える」
対症療法ではなく、消化・代謝・免疫・自律神経といった身体の調整システムを支えることを重視します。
食事療法の主要な視点

① エネルギーと血糖の安定
• 精製糖の過剰を避ける
• 食物繊維・タンパク質・良質な脂質をバランスよく摂る
• 食事の間隔を整える
② 腸内環境(腸内細菌叢)
• 発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルトなど)
• 食物繊維(野菜、豆、全粒穀物)
• 超加工食品の削減
腸は免疫・神経・ホルモンと深く関係し、「第二の脳」とも呼ばれます。
③ 炎症と脂質バランス
• オメガ3系脂肪酸(魚、亜麻仁油など)を意識
• トランス脂肪酸や過剰な加工油の制限
• 抗酸化食品(色の濃い野菜、果物、ハーブ)の活用
④ 体質・伝統医学の視点
• 中医学:陰陽五行、寒熱、気血水
• アーユルヴェーダ:ドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カパ)
• マクロビオティック:陰陽・身土不二
これらの知恵を現代栄養学と組み合わせることが可能です。
実践の基本フレーム

1. 評価
• 現在の食習慣、体調、消化、睡眠、ストレス、検査値
2. 目標設定
• 体重管理、血糖改善、疲労軽減、腸内環境改善など
3. 食事設計
• 主食・主菜・副菜のバランス
• 季節性・地域性の考慮
4. 実行とモニタリング
• 体調変化、便通、睡眠、エネルギー感を観察
5. 再評価と調整
• うまくいかない部分を修正
適用される場面(一般的な例)

• 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)
• 慢性炎症、自己免疫傾向
• 消化不良、過敏性腸症候群(IBS)
• 疲労、ブレインフォグ(頭のもや)
• 皮膚トラブル
• メンタルヘルスの補助(食と気分の関係)
• がん治療の補完(QOL支援、栄養維持)
強み
• 日常に落とし込みやすい
• 予防効果が高い
• 身体の根本的な土台にアプローチできる
• 他の療法(ヨーガ、瞑想、ハーブなど)と相性が良い
限界・注意点

• 極端な制限は栄養不足を招く可能性
• 重篤疾患では医師・管理栄養士の関与が必須
• サプリメントに頼りすぎない
• 文化・嗜好・生活リズムとの摩擦に配慮が必要
• 「万能食」は存在しない
標準医療との関係

食事療法は補完的アプローチであり、診断や薬物療法の代替ではありません。
特に糖尿病、腎疾患、がん治療中、妊娠・授乳期などでは専門家の管理が推奨されます。
関連分野

• 食事療法 各論
• オーソモレキュラー医学
• メディカルハーブ
• アーユルヴェーダ
• 中医学(薬膳)
• マクロビオティック
• 統合医療モデル



コメント