漢方医学 概論・薬膳
概要
漢方医学は、中国で体系化され、日本で独自に発展した伝統医学です。
「病名」ではなく体質や状態(証:しょう)に基づいて診断し、複数の生薬を組み合わせた処方で全身のバランスを整えます。
また、薬だけでなく日々の食事(薬膳)や養生を通じて未病を防ぐことを重視する点に特徴があります。
背景と成り立ち
漢方医学の基礎は『黄帝内経』『傷寒論』『金匱要略』などの古典に遡ります。
日本には奈良・平安時代に伝来し、江戸期には日本独自の考察(腹診など)が加わり発展しました。
現在の日本では、西洋医学と並ぶ医療体系として保険診療に組み込まれており、医師や薬剤師が処方・調剤を行います。
漢方医学の基本理論(コアコンセプト)
1)証(しょう)診断
漢方では、病名ではなく**体質・症状のパターン(証)**を重視します。
代表的な視点は次の通りです。
• 気・血・水の過不足や停滞
• 陰陽の偏り(冷え・熱・虚実など)
• 五臓(肝・心・脾・肺・腎)のバランス
2)随証療法
同じ病名でも証が違えば処方が変わります。
例:頭痛でも、冷え由来・ストレス由来・血虚由来では用いる漢方が異なります。
3)君臣佐使の配剤
漢方処方は複数の生薬で構成され、それぞれ役割があります。
• 君薬:主に症状を改善
• 臣薬:君薬を補佐
• 佐薬:副作用の軽減や調整
• 使薬:全体の調和
漢方の主な診断方法
望診(見る)
顔色、舌の色・苔、姿勢、体格など
聞診(聞く)
声の張り、咳、呼吸
問診(問う)
食欲、睡眠、便通、冷え、汗、月経、ストレスなど
切診(触れる)
脈診、腹診(腹部の緊張や冷え)
代表的な漢方処方の例(一般的な目安)
※あくまで例であり、自己判断での使用は推奨されません。
• 葛根湯:風邪の初期、肩こり
• 当帰芍薬散:冷え、むくみ、月経トラブル
• 加味逍遙散:ストレス、イライラ、更年期症状
• 補中益気湯:疲労、食欲不振
• 六君子湯:胃もたれ、消化不良
• 八味地黄丸:冷え、腰痛、頻尿傾向
薬膳(やくぜん)
薬膳とは
薬膳は、漢方の理論(陰陽・五行・気血水・寒熱など)を基に、日常の食材を使って体調を整える食事法です。
「薬としての食」ではなく、食としての薬という発想が基本です。
薬膳の基本原則
1)体質に合わせる
同じ食材でも、体質によって合う・合わないが異なります。
• 冷え体質(陽虚):温性・熱性の食材を意識(生姜、ねぎ、にんにく、シナモン)
• ほてり体質(陰虚):涼性の食材を意識(きゅうり、トマト、梨、緑茶)
2)季節に合わせる
• 春:気の巡りを整える(セロリ、春菊、よもぎ)
• 夏:熱を冷ます(きゅうり、トマト、スイカ)
• 秋:潤いを補う(梨、白ごま、蓮根)
• 冬:体を温める(生姜、ねぎ、羊肉、黒豆)
3)五味(甘・酸・苦・辛・鹹)のバランス
偏りすぎない食事を目指します。
例:甘いものばかり→湿を生む、塩辛いもの→水の停滞など。
目的別・簡易薬膳の例
冷え対策
• 生姜スープ、ねぎ入り味噌汁、黒豆ご飯
胃腸ケア
• お粥、山芋、白身魚の煮付け
乾燥対策(秋冬)
• 梨のコンポート、白きくらげのスープ
ストレス緩和
• セロリと春菊の和え物、ジャスミン茶
漢方・薬膳の強み
• 体質に基づく個別対応が可能
• 予防(未病)を重視
• 食事と薬を連続体として扱う
• 西洋医学と併用しやすい
限界・注意点
• 急性外傷や重篤疾患は標準医療が優先
• 漢方薬は他の薬との相互作用に注意
• 妊娠・授乳中は使用制限のある生薬がある
• 自己判断での長期大量使用は避ける
• 薬膳も極端な偏りは栄養不足を招く可能性
標準医療との関係
漢方医学は日本の医療制度の中で正式に認められており、西洋医学と併用されることが多い分野です。
診断、検査、緊急対応は西洋医学が優先され、漢方や薬膳は補完的に用いられます。
関連分野
• 東洋医学 概論
• 鍼灸
• 食事療法(概論・各論)
• アーユルヴェーダ
• マクロビオティック
• メディカルハーブ



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