東洋医学 概論
概要
東洋医学は、中国を中心に発展し、日本・韓国・東南アジアなどに伝わった伝統医学体系の総称です。
人体を「気・血・水(津液)」の循環とバランスとして捉え、自然(季節・環境)との関係性の中で健康を理解します。
症状そのものだけでなく、体質・体調の変化・生活リズム・感情・環境を総合的に評価し、「整える医療」を志向する点が特徴です。
背景と成り立ち
東洋医学の基礎は、紀元前の中国古典医学書『黄帝内経』『傷寒論』『金匱要略』などに体系化されました。
その後、日本には奈良・平安期以降に伝来し、独自の発展を遂げ、漢方医学、鍼灸、薬膳、気功などの形で現在に受け継がれています。
現代では、伝統医学としての知恵と、西洋医学的研究(生理学・薬理学)との接点が模索されています。
基本理論(コアコンセプト)
1)気・血・水(津液)
東洋医学では、健康は次の三要素の巡りと質で決まると考えます。
• 気(き):生命活動を支えるエネルギー
• 血(けつ):栄養と潤いを運ぶ実体
• 水(津液:すい):体液・潤い・代謝産物
これらが不足・停滞・偏りを起こすと不調が生じるとされます。
2)陰陽論
あらゆる現象を「陰」と「陽」の相対関係で捉えます。
• 陰:静・冷・内・潤・休息
• 陽:動・熱・外・乾・活動
健康とは、陰陽が調和している状態とされます。
3)五行論
自然界と人体を「木・火・土・金・水」の五つの要素に分類し、相生(助け合い)・相克(抑制)の関係で理解します。
臓腑・感情・季節・味・色などが対応づけられ、診断や養生に活かされます。
4)臓腑(ぞうふ)観
西洋医学の臓器とは異なる機能的概念で、主に次の五臓が重視されます。
• 肝:気の巡り、感情の調整
• 心:精神・血脈
• 脾:消化吸収、血の統制
• 肺:呼吸・水分代謝
• 腎:生命力・成長・老化
5)経絡(けいらく)
気と血が巡る通路と考えられ、鍼灸や指圧の理論的基盤となります。
主な診断方法
望診(見る)
• 顔色、舌の色・苔、姿勢、皮膚の状態
聞診(聞く)
• 声の質、呼吸、咳
問診(問う)
• 食欲、睡眠、便通、冷え、汗、月経、ストレスなど
切診(触れる)
• 脈診(脈の強さ・速さ・深さ)
• 腹診(お腹の緊張や冷え)
主な治療・養生法
漢方薬
• 生薬を組み合わせた処方
• 体質や症状の「証(しょう)」に基づいて選択
鍼灸
• 経穴(ツボ)への刺激で気血の流れを整える
• 痛み、自律神経調整、ストレス関連症状に用いられることがある
推拿(すいな)・按摩
• 徒手による経絡調整
薬膳
• 食材の性質(温・熱・涼・寒)と味(五味)を活かした食養生
気功・養生
• 呼吸、動き、意識を整えるセルフケア
適用される場面(一般的な例)
• 冷え、むくみ、疲労
• 消化不良、便秘、下痢
• 月経トラブル(PMS、生理痛)
• 肩こり、腰痛、頭痛
• 不眠、ストレス関連症状
• 風邪の初期、体調管理
強み
• 体質に基づく個別対応が可能
• 予防(未病)を重視
• 食・生活・心まで含めた包括的ケア
• 鍼灸や漢方など実践手段が多様
限界・注意点
• 急性外傷、感染症、重篤疾患では標準医療が優先
• 漢方薬は薬との相互作用に注意が必要
• 診断の言語(証)が専門的で分かりにくい場合がある
• 施術者の経験や流派により判断が異なることがある
標準医療との関係
東洋医学は補完的アプローチとして位置づけられ、診断・救急医療・手術の代替ではありません。
一方で、慢性症状や自律神経調整、生活習慣の改善、痛みのケアなどでは併用されることがあります。
関連分野
• 漢方医学(概論・薬膳)
• 鍼灸
• アーユルヴェーダ(体質論の共通点)
• マクロビオティック(陰陽の共通点)
• 食事療法(概論・各論)
• 気功・エネルギーワーク



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