サイモントン療法

サイモントン療法

サイモントン療法

概要

サイモントン療法は、がんを中心とした重篤疾患に対し、心理・情動・イメージ・意味づけに働きかけることで、治療への適応や生活の質(QOL)を高めることを目的とした心身アプローチです。
標準医療の代替ではなく、治療と並行して行う補完的心理療法として位置づけられます。
「がんは心で治る」という単純化ではなく、ストレス反応・対処スタイル・希望・自己効力感を整えることが中心です。

背景と成り立ち

サイモントン療法は、1970年代にアメリカの放射線腫瘍医カール・サイモントン(O. Carl Simonton)とステファニー・サイモントン夫妻によって開発されました。
当時、がん患者の心理状態(不安、絶望、孤立)が治療の継続や回復に大きく影響することに着目し、イメージ療法や心理教育を組み合わせたプログラムを構築しました。
現在では、がん支持療法(サポーティブケア)の一つとして国際的に実践・研究されています。

基本理論(コアコンセプト)

1)心身相関

ストレス、絶望感、無力感は自律神経・免疫・ホルモンに影響し、治療への適応や回復過程に関与すると考えます。
逆に、安心感・希望・主体性は身体の調整を支える可能性があるとされます。

2)コントロール感の回復

病気によって失われがちな「自分でできること」を取り戻し、受動的な患者から主体的な当事者へと立場を変えることを重視します。

3)イメージの活用

イメージは感情と身体反応を媒介すると考え、治療や免疫の働きを支える内的表象を育てます。

4)意味づけと価値観

病気を「罰」や「敗北」としてではなく、人生の転機としてどう位置づけるかを共に探ります。

主なプログラム要素

① 心理教育(サイコエデュケーション)
• がん治療の基礎知識
• ストレスと身体反応の仕組み
• 心身相関の理解

② リラクゼーション訓練
• 呼吸法
• 筋弛緩法
• マインドフルネス的な身体感覚への気づき

③ イメージ療法

代表的な実践例:
• 治療イメージ:抗がん剤や放射線ががん細胞に働く様子を具体的に描く
• 免疫イメージ:白血球ががん細胞を包み込む・分解するイメージ
• 安全な場所のイメージ:安心できる内的空間を育てる

※「イメージは魔法ではなく、対処と感情調整のツール」と位置づけます。

④ ビリーフ(信念)の整理
• 「私は無力だ」「もう手遅れだ」といった思い込みを検討
• 「できることに集中する」「治療に参加する」といった現実的で支援的な信念へ再構築

⑤ 目標設定
• 短期:副作用対処、睡眠改善、通院継続
• 中期:体力維持、生活リズムの回復
• 長期:人生の価値に沿った生き方の再構築

⑥ 家族支援

家族も強い不安や疲労を抱えるため、コミュニケーションや役割分担を支援します。

適用される場面(一般的な例)

• がん治療中の不安・恐怖
• 副作用への対処(吐き気、痛み、倦怠感など)
• 治療への意欲低下
• 再発不安
• 終末期における心のケア
• 家族の心理的サポート

強み

• 治療継続率やQOLの向上が期待される場合がある
• 自己効力感(「自分でできること」)を高めやすい
• 不安・絶望感の軽減に寄与する可能性
• 医療チームとの協働を促進しやすい

限界・注意点

• がんそのものを治す治療ではない
• 重度のうつ病やトラウマがある場合は専門的心理治療が優先
• 「ポジティブでなければならない」という圧力をかけてはいけない
• イメージの効果は個人差が大きい
• 自己判断で標準治療を中断してはならない

標準医療との関係

サイモントン療法は標準がん治療(手術・化学療法・放射線療法)を前提とした補完的心理療法です。
主治医と連携しながら、安全に併用されることが望ましいとされています。

関連分野

• 統合医療と精神医学
• 瞑想・マインドフルネス
• 催眠療法
• 心身医学
• がんと統合医療
• 死生学(終末期ケアの文脈)

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