ホリスティック医学
概要
ホリスティック医学は、人を身体・心・社会・精神のすべてを含む「全体(ホール)」として捉える医療観です。
病気の部位や症状だけに焦点を当てるのではなく、その人の生活、価値観、人間関係、環境、ストレス、意味づけなどを含めて理解し、回復や健康を支えることを目的とします。
特定の治療法を指すというより、医療のあり方そのものを示す哲学・姿勢として位置づけられます。
背景と成り立ち
20世紀後半、医療の高度専門化が進む一方で、患者が「部分として扱われている」と感じるケースが増えました。
その反省から、患者中心性や全人的ケアを重視する流れが強まり、ホリスティック医学という概念が広がりました。
同時期に、心身医学、統合医療、補完代替医療の発展とも重なり、相互に影響を与えながら発展してきました。
基本原則(コアコンセプト)
1)全人的アプローチ
人を臓器の集合ではなく、「身体・心・社会・精神をもつ存在」として扱います。
症状の背後にある生活や心理、価値観を重視します。
2)患者中心性
医療者が一方的に治療を決めるのではなく、患者の希望・価値観・生活背景を尊重します。
意思決定は協働(shared decision making)で行われます。
3)自然治癒力の尊重
身体には回復する力が備わっていると考え、その力を支える環境づくりを重視します。
4)予防と生活の重視
病気を「治す」だけでなく、食事・睡眠・運動・ストレス管理・人間関係など、日常生活を整えることを重視します。
何を含むか(実践の要素)
ホリスティック医学は特定の療法に限定されず、必要に応じて次のような要素を組み合わせます。
• 標準医療(診断・薬物療法・手術など)
• 心理療法(カウンセリング、認知行動療法など)
• 補完代替医療(鍼灸、ハーブ、瞑想、手技療法など)
• 生活習慣の調整(食事、運動、睡眠、ストレス管理)
• 社会的支援(家族、コミュニティ、職場環境)
• 意味・価値の探求(死生観、人生の目的、スピリチュアリティ)
適用される場面(一般的な例)
• 慢性疾患(痛み、自己免疫疾患、疲労など)
• ストレス関連症状
• がん治療におけるQOL(生活の質)の支援
• 心身症や心身相関の問題
• 予防医療・健康増進
強み
• 患者が「理解されている」と感じやすい
• 生活の質(QOL)を重視できる
• 身体だけでなく心や人間関係まで含めて支援できる
• 画一的でなく、個別性に対応できる
限界・注意点
• すべての補完療法に十分な科学的エビデンスがあるわけではない
• 急性疾患や緊急時は標準医療が優先される
• 「自然治癒力」を過信し、必要な治療を遅らせてはいけない
• 医療者の価値観が押し付けにならないよう配慮が必要
標準医療との関係
ホリスティック医学は標準医療を否定するものではありません。
むしろ、標準医療を基盤としながら、心理・社会・精神的側面を補完的に統合する姿勢です。
手術や薬物療法が必要な場面では、それらが最優先されます。
関連分野
• 統合医療学概論
• 統合医療モデル
• 心身医学
• サイモントン療法
• アントロポゾフィー医学
• 自然療法



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