ハライチ
個人的な点数:82点
男性ブランコや金属バットを抑えての敗者復活、ハライチ。
敗者復活とは違うネタを披露ということで、視聴者を大いに楽しませてくれたと思います。
2009年から5大会にわたって決勝に進出しているハライチですが、これで旧M-1時代を知る漫才師もいよいよ…という感じですね。寂しくなります。
ハライチは新M-1では毎回違うスタイルで挑む姿勢は素晴らしいと思います。
色々なフォーマットを決勝レベルの水準にまで引き上げるのは並大抵のことではありません。
審査員からも言われていたことではありますが、既に十分に売れているのにリスク覚悟で挑戦するというのも多くの人の胸をうった部分だと思います。
果たして今回は敗者復活から爆発なるか…というところで、
今回のネタについての感想。
1度目の岩井さんがキレるくだりまでは意図はわかるのですが、その後それ一本だけというのはちょっと淡白に感じました。
澤部さんも対抗して狂っていったり、あるいは岩井さんが毎回違うキレ方をするなどの、
一定の変化は必要だったかと思います。
何より1回目のブチギレのシーンで、床に座り込んだり澤部さんに軽く威嚇するなどの“アクション”を使い切ってしまったため、
2回目以降は本当に単なる繰り返しが続いた印象。
キレ方に関しては、おそらくサイコ寄りの演技プランにしても良かったのではないかな、と。
それこそ2018年スーパーマラドーナの一発目のボケ、“ニコニコしながらドアの鍵ガッチャン”なんかが理想例で、
岩井さんは表面ではめちゃくちゃニコニコしてるのに足は物凄い床を蹴ってるなど、2回目以降のブチギレシーンではそういう変化が見たかったところ。
また、ネタでも平場でも澤部さんの存在感がかなり薄かったため、やっぱり“リアクション要因”以上の役割を果たす澤部さんは見たかったなぁと。
“ハライチの漫才”というよりも“岩井さんのワンマンショー”を見た印象で、
どうせめちゃくちゃやるならアドリブぶっ込んで澤部さんを困らせるくらいのことをしても良かったと思うんですよね。バラエティで活躍してきたアドバンテージをそういう形で見せつけることも出来たはず。
下位に沈んではしまいましたが、ハライチのお二人ラストイヤーお疲れ様でした!
さて、ここに関してはネタの内容ではなく大会のルールの部分についてですが、
敗者復活戦でも決勝戦でもハライチはかなり大きくタイムオーバーしているんですよね。
ここに関しての規定は何かあった方が良いのでは、と思います。
4分という制限時間を完全に守るのは難しいかもしれませんが、さすがに5分を大きく超える尺は明らかに長いですし、4分にどうにか合わせようとネタを削っている他コンビが割を食う事態になってしまうので。
特に敗者復活戦ではタイムオーバーの効果音が鳴らされた状態でもネタが続いていたため、その辺りは気にならざるを得なかったところ。
次回以降、ネタ時間に関して何らかの措置が取られることになるでしょうか。
真空ジェシカ
個人的な点数:92点
ウケ量はかなり多く取っていた一方で、やはりボケが単発の詰め合わせという印象はあると思います。だから得点が伸びなかったのもわかる。
ただめちゃくちゃ安定して面白かったです。
フォーマットやキャラクターに合ったストーリーを重視される中、
ひたすら“発想の強さ”だけで勝負するこのスタイルは、刺さった人は多いのではないでしょうか。
あと、「知識が無いと笑えない」という議題で色々意見があがってきるようですが、
語感のインパクトで笑いを取っているコンビなので、知識量はそんなに関係はないかなと思います。
「詳しく知ってるわけではないけど、ギリギリ単語くらいは聞いたことがある」レベルの用語をひたすら駆使して、
お客さんが共感できるギリギリのラインを的確に突いていた印象。
例えばジャイロボールについて詳しく知らないお客さんも多かったと思うのですが、単語自体は聞いたことがある、という人は多かったと思います。
何より使っていたワード全てが強かったため、詳しく知らなかったとしてもワードの強さで思わず笑ってしまうというのが強み。
明確なフォーマットに依存していないために、飽きられにくいという大きなポイントがあると思います。
したがって次回かなり有力だと見ています。
仕上がりによっては優勝候補に入るレベル。
オズワルド
個人的な点数:93点
隙がない。
この一言に尽きると思います。
オズワルドのネタを見た多くの方に、この意見には共感してもらえるはず。
本当に徹底して詰めてきたのだなぁと。
ネタ終わり後の「トムとジェリー」も完全に用意した武器で、
ネタや平場を完璧に隙なくやり切ろうとした姿勢が物凄く見えます。
そういう意味でも“優勝候補”という呼び声は妥当だと言えます。
そしてボケの畠中さんが抜群に上手いですね。サイコなネタでしたが、本当にそう思ってるキャラにしか見えない。
汎用的なボケも足して足して、完璧な仕上がりになっていました。
ただ会場をオズワルドの空気にするところまではいってなかったかな、と。
直近で言えば2019年のミルクボーイや2020年のおいでやすこが辺りの、初見の大爆発と比べると
3回目の進出となるオズワルドは既に観客に知られている分、ネタ終わり後はちょっと様子見された感じもあります。
ロングコートダディ
個人的な点数:95点
めちゃくちゃ面白かったです。
単発のボケもさることながら、展開で面白がらせるタイプの中ではダントツに良かったコンビ。
「2本目が見たい」と一番思わせたコンビではないでしょうか。
序盤少しセリフ間に不自然な間が空いていたこともありましたが、
客ウケが乗ってからは完全にストーリーに入り切りましたね。
真空ジェシカとはまた違った、センスの塊だと思います。
このコンビも来年かなり有力。
松本さんや巨人師匠がおっしゃる「センターマイク」の指摘もわかる。
特にステージを広く動き回っていた都合上、より“劇”として見られやすいという側面はあったかと思います。
あれだけ広く使ったからこそ、天界と人間界の距離感に一定の説得力を持たせられたと個人的に解釈しているので、決して無駄に動き回っていたわけでは無いとは思いますが、
最後はやはりセンターマイク前で漫才師に戻って締めた方が、より隙が無かったとは思います。
錦鯉
個人的な点数:95点
中盤までエンジンがかからなかったのでヒヤヒヤしましたが、終盤は今大会一のラッシュを見せたのでは無いでしょうか。
あそこで一気に持って行った感じはあります。
礼二さんの仰る通り、「乾燥したかかと見る?」辺りのリアルな年齢ギャグが序盤にあると、もう少し早く客席を掴めたかもしれません。
過去大会の予選でも披露していたこの合コンネタでしたが、満を辞しての決勝で披露となりました。
正直出だしで「合コン」というワードが出た時点で最終決戦進出を確信しました。それくらいこれは強いネタ。
微妙に掴むのに時間を要した部分以外はノーミスでやり切ったというのもかなり大きな点。
オズワルド→ロングコートダディ、と大ウケが続いていたため、
ミスがあるとそれを理由に減点対象にされかねないところではありました。
ただまさのりさんが乗り切ってからは、むしろ噛んでも面白くなったかもしれません。
あとは今大会随一の愛されコンビというのも大きかったですね。ランジャタイ同様、溢れ出る愛嬌は間違いなくお客さんを味方にしたはず。
技術だけでなく人間的な魅力も、他のコンビにはなかなか真似できない強みだと思います。
その上ネタまで強いのだから、本当に色々な意味で強いコンビです。
インディアンス
個人的な点数:94点
今年一番サプライズだったのが、インディアンスがめちゃくちゃ良くなっていた点。
2年前はネタを飛ばしたということもありますがかなり台本でボケてる感があり、正直好き嫌いはハッキリ分かれた芸風になっていたと思います。
昨年は打って変わってかなりコンビ間の関係性を押し出したり、アドリブ風のボケを入れるなど、柔らかい空気感が印象的でした。
そして今年、過去2年のまさにちょうどいい中間点、程よい空気感で無理なく、しかしハイテンポでボケを連発する非常に完成された漫才になっていました。
めちゃくちゃちょうど良かったですし、凄く見やすかったです。
そして何より連発しているボケの一撃が重い重い。
こういうスタイルはボケ一つ一つを冷静に見るとそうでもなかったりするのですが、
かなりネタをかけて練ってきたのでしょう、
重いボケを高速で連発する凄いスタイルになっていました。いやそれはもう笑うしかないて。
特に最後の「どうもー、インディアンスです!」は色んな意味で綺麗にハマりました。この1本目を2本目に持ってきていたら優勝あったんじゃないかなと思います。凄い完成度。
まあでもそれをすると、1本目が弱くなってファーストラウンドでロングコートダディを抜くのが難しくなりファイナルに残れなくなるので、
やはりちょっとどうしようもなかったか。
しかし過去2年の雪辱を確実に果たしたと思います。
この手の高速漫才のある種の完成形ではないでしょうか。強い。
もも
個人的な点数:90点
場慣れしていない分、ちょっと他コンビと比べると若干浮いていた感じはあります。
あるいは紹介VTRの部分で、芸歴の若さをお客さんに不安がられた可能性もなくはありません。
ワードに関しても、審査員にぶっ刺さる感じの内容もそこまで無かったかもしれません。対象年齢はもう少し若めというか。
また、巨人師匠に言われていた通り、構成もやろうと思えばより“M-1特化”させられたと思います。「ズレてます?」のくだりをもう少し端折るか、あるいは小ボケを挟むか。
ただ、あれだけの若さでM-1のトリ出番で、目立ったミスなくやり切ったのは凄いこと。めちゃくちゃ格好いいです。
また、おそらくこのフォーマットは年を取れば取るほどもっと面白くなると思うんですよね。例えがもっと渋くなっていきそうというか。
あるいは、髪型や髪色、服装を変えるだけで例えの対象がガラリと変わるので、意外と汎用性高そうなんですよね。
もちろんこのフォーマットを続けない可能性もありますので、色々な意味で今後のももに注目したいと思います。
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