ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の作用機序は? 副作用や注意点を解説

免疫疾患

ザヌブルチニブとは、抗悪性腫瘍剤(ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤)です。
今回の記事では、ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の効果や作用機序、副作用、使用してはいけない人などについて解説します。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の効果

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)は、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫に用いられます(※1)。

慢性リンパ性白血病とは、Bリンパ球と呼ばれる細胞ががん化し、異常に増える病気です(※2)。

原発性マクログロブリン血症とは、リンパ形質細胞の腫瘍化によって引き起こされる疾患のことです(※3)。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の作用機序

ザヌブルチニブは、がん化したB細胞の増殖を止める働きが期待できる薬剤です(※1)。

B細胞には「BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)」というスイッチのようなタンパク質があり、このBTKが働くと、B細胞がどんどん増えてしまいます(※1)。
ザヌブルチニブはこのBTKにピタッとくっついて、スイッチをオフにすることで、がん細胞の増殖を抑える働きが期待できます(※1)。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の副作用

以下のような重大な副作用が起こる可能性があるため、注意が必要です(※1、5、6)。

  • 出血

胃腸出血(頻度不明)、硬膜下血腫(0.1%)、脳出血(頻度不明)等があらわれる可能性があります。

  • 感染症

肺炎(3.9%)、クリプトコッカス性肺炎(0.1%)、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎(0.3%)等があらわれることがある。また、B型肝炎ウイルスの再活性化(0.6%)があらわれる可能性があります。

  • 骨髄抑制

好中球減少症(15.4%)、血小板減少症(5.0%)、貧血(6.3%)等の骨髄抑制があらわれる可能性があります。

  • 不整脈

心房細動(3.0%)、心房粗動(0.3%)等の不整脈があらわれる可能性があります。

  • 心臓障害

心筋梗塞(0.3%)、心筋炎(0.1%)、心不全(0.1%)等の心臓障害があらわれる可能性があります。

  • 間質性肺疾患

異常が認められた場合には、胸部X線、胸部CT等の検査を実施する必要があります。

間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うことが重要です。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)を使用してはいけない人

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者は、本剤を使用できません(※1)。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の使い方

通常、成人にはザヌブルチニブとして1回160mgを1日2回服用します(※1)。なお、患者の状態により適宜減量されます(※1)。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の注意点

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)を使用する上での注意点は以下の通りです(※1)。

  • 抗がん剤との併用

他の抗がん剤との併用については、効果や安全性がはっきりしていません。

  • 強い副作用が起きた際の対応

血液毒性(Grade 3)以上の発熱性好中球減少症、重大な出血を伴うGrade 3以上の血小板減少症、10日を超えて持続するGrade 4の好中球減少症、又は10日を超えて持続するGrade 4の血小板減少症)、又はGrade 3以上の非血液毒性が発現した場合は、いったん薬を中止し、ベースライン又はGrade 1以下に回復するまで本剤を休薬する必要があります。
回復後は以下の目安を参考に用量調節します。なお、GradeはCTCAEに準じます。

発現回数ごとの対応

1回目:1回160mgを1日2回

2回目:1回80mgを1日2回

3回目:1回80mgを1日1回

4回目:投与中止

  • CYP3A阻害剤との併用

中程度以上のCYP3A阻害剤を併用する場合には、併用薬に応じて次のように用量調節する必要があります。

CYP3A阻害剤の程度と用量調節】

強いCYP3A阻害剤:1回80mgを1日1回
中程度のCYP3A阻害剤:1回80mgを1日2回

  • 出血

出血があらわれることがあり、外科的処置に伴って大量出血が生じる可能性があります。そのため、本剤服用中に手術や侵襲的手技を実施する患者に対しては、手術の前後3〜7日間程度は本剤の服用中断が考慮されます。

  • 感染症

感染症(日和見感染症を含む)の発現もしくは悪化、又はB型肝炎ウイルス、帯状疱疹等の再活性化があらわれることがあります。そのため、本剤投与に先立って肝炎ウイルス等の感染の有無を確認することが必要です。

本剤投与前に適切な処置を行い、本剤投与中は、感染症の発現又は悪化に十分注意が必要です。

  • 骨髄抑制

本剤使用中は骨髄抑制があらわれることがあるため、本剤投与に際しては定期的に血液検査を行うことが必要です。

  • 重篤な不整脈

本剤使用中は、重篤な不整脈が発現又は悪化することがあります。本剤投与に際しては定期的に心機能検査(十二誘導心電図検査等)を行うことが必要です。

  • 間質性肺疾患

間質性肺疾患があらわれることがあります。そのため、本剤の投与にあたっては、臨床症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認、胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うことが必要です。

  • 本剤投与の条件

本剤は、緊急時に十分に対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与することが必要です。

また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与することが必要となります。

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)の承認と発売

2024年12月27日に日本での製造販売が承認され、2025年3月19日、薬価収載と同時に発売されました(※4)。

まとめ

ザヌブルチニブ(ブルキンザ)は、B細胞由来の血液がんに対して効果が期待される新しい経口抗がん剤です。
がんの進行を抑える一方で、重篤な副作用もあり、慎重な管理と医療体制のもとで使用されます。
治療を受ける際は、医師との十分な相談と適切なフォローアップが重要です。

【参考文献】

(※1)医療用医薬品:ブルキンザ

(※2)日本赤十字社 がん診療センター

(※3)原発性マクログロブリン血症の病態・診断・治療

(※4)慢性リンパ性白血病と原発性マクログロブリン血症に同時承認されたBTK阻害薬

(※5)Hillmen P,et al., J Clin Oncol., 41, 1035-45, (2023)

(※6)Brown JR,et al., N Engl J Med., 388, 319-32, (2023)

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