ねえねえ、雨崎さん
お、なんだなんだ?
聞きたいことがあるんだけど
ああ、ポケモンの種族値の覚え方か?
すばやさなんかはランクバトルを回している内に自然と……
ワクチン!
ワクチンってさ、色んな種類があるって本当?
なるほど、ワクチンの種類に興味を持ったのか。
良いだろう、今回は「ワクチンの種類」をテーマに解説していこう
うーん、でもワクチンの種類…
色々あって難しそうだな…
なに、そう身構えることはない。
例えば、RPGなどのゲームには膨大な数のモンスターが登場するが、
プレイするうちにそれらの名前や技を、何となく覚えていったりするだろう?
確かに!
てことは、ワクチンもその要領で覚えていける、ってこと!?
ああ。
これから始まるのは『ワクチンモンスターズ』、略してワクモンだ
ワクモン……
ワクモン王に、俺はなる!
なんか聞いたことあるな
ワクチンの種類
さて、ワクチンの仕組みについては、前回の記事で教えたな
病原体の一部を体内に入れることで、免疫システムに記憶してもらって、
実際に感染した時に、いち早く動いてもらう!
…だったよね?
その通りだ
そして、体内に入れる病原体の状態によって、ワクチンの種類は分かれることになる
病原体の状態?
ワクチンの目的は、感染を防いだり、感染したとしても軽症で済ませることにある
しかし、ワクチン接種により投入された病原体のせいで、
病気にかかってしまっては元も子もない
そうならないために、あらかじめ病原体を弱めておいたり、死滅させてから、体内に入れるんだ
はえー!
そういう事だったのか!
そして、この病原体の状態により、ワクチンの種類は分岐するんだ
①生ワクチン
まずは、弱毒化した病原体を使って作られる「生ワクチン」
弱毒化?
感染力を大幅に弱めている、ということだ
そういうことか!
……弱ってるとはいえ生きてるから、「生」ワクチン、ってこと!?
その通り。
この生ワクチンは体内に入ると、軽い感染を引き起こし、免疫システムに病原体を認識させ、抗体を作り出す手助けをする
そうなんだ…
でもさ、どうせ病原体を弱めるなら、いっそ死滅させちゃダメなの?
そっちのが安全そうじゃん
確かに、死滅させた病原体を使うワクチンも存在する。
だが、生ワクチンには生ワクチンの強みがあるんだ
強み……
生ワクチンで用いられる病原体は、弱毒化されたとはいえ生きている。
つまり、この病原体は、体内で実際に増殖するということだ。
そして、それに対する免疫反応も、自然感染に近い、強いものになる
なるほど、生きてる病原体ならではの強い免疫反応を起こせるのか…
その通り。
その免疫反応の強さ故に、一度の接種で、長期的な免疫を獲得できるという特徴がある。
追加接種が不要になるケースも多い
はえー……
生ワクチンは、そういう特徴があるんだね!
主な生ワクチンは以下の通りだ。
【定期接種】
・BCG
・麻疹・風疹混合(MR)
・麻疹(はしか)
・風疹
・水痘
・ロタウイルス:1価、5価
【任意接種】
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
・黄熱
・帯状疱疹(水痘ワクチンを使用)
・M pox(暴露リスクの高い方)
麻疹とか風疹とか聞いた事あるかも!
あ、じゃあさ、死滅させた病原体を使ったワクチンにはどんな特徴があるの?
②不活化ワクチン
病原体を死滅させた状態で使用するワクチンを、不活化ワクチンと言う
活きてないから、「不活化」ワクチン?
その通りだ。わかりやすいだろ?
あれ?
生ワクチンと違って、不活化ワクチンの病原体は死んでるわけだから、
体内で感染は起こらないし、免疫システムも働かないんじゃ?
良い着眼点だ。
確かに、不活化ワクチンの場合、体内で感染を引き起こすことは無い。
だが、免疫システムが反応するのは感染だけじゃない。
死んでいるとはいえ、侵入してきたウイルスや細菌を、免疫システムは「異物」として認識する
はえー、そうなんだ!
ぬこ様も、家に帰るとリビングに知らない誰かがいたら、警戒するだろう?
それはめちゃくちゃ警戒する
免疫システムにとって、身体は家のようなもの、という事だ。
そして、不活化ワクチンは、病原体が死滅しているが故に、感染が起こらず、安全性が高い
凄いじゃん!
だがその分、免疫の訓練度合いは低くなる。
生ワクチンと比べると、複数回の接種を要する場合が多い
そこは生ワクチンと一長一短なんだね
主な不活化ワクチンは以下の通りだ
【定期接種】
・百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ・インフルエンザ菌b型混合
・百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合
・百日咳・ジフテリア・破傷風混合(DPT)
・ポリオ(IPV)
・ジフテリア・破傷風混合トキソイド(DT)
・日本脳炎
・肺炎球菌
・インフルエンザb型(Hib)
・B型肝炎ワクチン
・ヒトパピローマウイルス(HPV):2価、4価、9価
・インフルエンザ
・肺炎球菌(23価英膜ポリサッカライド)
・新型コロナ
【任意接種】
・破傷風トキソイド
・A型肝炎
・狂犬病
・髄膜炎菌:4価
・帯状疱疹
・RSウイルス
インフルエンザや新型コロナはここに該当するんだね!
…あれ?
でも、新型コロナって、他にもワクチンを使ってなかったっけ?
生ワクチンでもない、不活化ワクチンでもない、えーと……
mRNAワクチンのことだな
③mRNAワクチン
mRNAワクチン……
生ワクチンや不活化ワクチンとは違うの?
mRNAワクチンは、従来のものとは異なる機序で、体内に病原体を導入する
異なる機序?
病原体を弱めたり、死滅させる以外の状態で、ってことだよね?
うーん……
逆に、めちゃくちゃ元気な状態で体内に入れるとか?
だいぶ逆だな
逆過ぎたか
mRNAワクチンは、病原体を体内に入れない
えっ?
代わりに、病原体の遺伝子情報を注入するんだ
えっ?
遺伝子?
注入された遺伝子情報をもとにして、体内でウイルスの一部が作られ、
それに免疫が反応し、免疫システムが訓練されていく……
と、こういう流れだな
なるほど……
でも、遠回りじゃない?
生ワクチンや不活化ワクチンみたいに、病原体を直接入れた方が手っ取り早い気がするけど……
一見遠回りに見えるかも知れないが、メリットもある。
例えば、病原体を直接入れないということは、感染のリスクを生まないということでもある
あー、なるほど。
……あれ?
でも、注入された遺伝子情報をもとにして、ウイルスが作られるんだよね?
そのウイルスは感染したりしないの?
mRNAワクチンで用いられる遺伝子情報は、感染力を持たない「ウイルスの一部のみ」を作り出すよう、調整してあるんだ
へー!
そんな事出来るんだね!
mRNAワクチンは、製造面におけるメリットも大きい。
病原体を増やしたり弱毒化したり…といった工程が必要な他のワクチンと比べ、
設計図である遺伝子情報を作るだけで済むため、短期間で開発できる。
感染症の急速な流行など、
「ワクチンの迅速な開発が求められる局面」で、この特性は有効に働く
あー、だから新型コロナに対して作られたのか!
そしてこのmRNAワクチンは、遺伝子情報を作り変えるだけで済むから、応用も効く。
つまり、ウイルスの変異にも速やかに対応して、新たなワクチンを作り出せるという事だ
なるほど……
だが、弱点もある。
例えば、保存や輸送が難しい点だ。
mRNAは非常に壊れやすいため、超低温で保存する必要がある。配送や保管には不向きということだ
環境が整ってないと、使いにくいんだね
また、「長期的な安全性」に対する不安も弱点の一つだ。
「治験が足りない」
「承認している国が少ない」
「このワクチンを接種してから、5年後、10年後、私たちの身体は大丈夫なのか?」
新しいワクチンだけに、こうした不安も付き纏う
シェディングを心配する声もあるしね
ただ、この技術は新型コロナだけに止まらず、がん治療などにも応用が期待されている
mRNAワクチンが、がん治療に?
がん細胞には、正常の細胞には殆ど存在しないタンパク質が付着していることがあるんだが、
これと同じものをmRNAに作らせるんだ
え?
……ああ!
がん細胞特有のタンパク質を、mRNAワクチンに作らせることで、
免疫システムに「このタンパク質は攻撃対象の異物」だと記憶させるんだね!
……とまあ、
生ワクチン、不活化ワクチン、mRNAワクチン……
どのワクチンも特徴があり、目的に応じて使い分けられている、ということだ。
なるほどなぁ……
なんとなく理解できた気がする!
素晴らしい。
それでこそワク影だ
ワク影?
俺の夢は、立派な忍者になって、ワク影になる事だってばよ
だいぶ聞いたことがあるな
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