【M-1グランプリでよくある疑問】「審査員がおかしい」「視聴者投票も入れるべき」について「敗者復活戦】 #M1グランプリ

お笑い

審査に関する色々な疑問

Q.
「私が面白いと思った芸人が優勝しなかった!芸人は視聴者を笑わせるもの、ならば視聴者が面白いと思った芸人が優勝じゃないとおかしいのでは?」

A.
つまり「視聴者(または自分)の意見が芸人審査よりも優れている」、または「視聴者投票の方が良いのでは」というような意見ですね。
ただそれは「賞レース」というよりは「人気投票」が適切でしょう。

まず視聴者投票の場合、オンエアバトルやM-1でも見られる傾向ですが、
「面白さ」だけでなく「人気」や「好感度」といったものが非常に大きく影響します。
「人気者」「ライト層向けのボケが多い」「シュールなボケを多用しない」「好感度が下がらない」ネタを行うコンビはやはり有利であり、
それらをしないコンビや、知名度で劣るコンビはやはり不利です。

要するに視聴者の意見で選ばれた芸人が必ずしも一番面白いとは限らない、というわけで。
実際、視聴者審査のオンバトでは常に上位のコンビが、芸人・作家審査のM-1では中々結果を残せない、という事態も多くありました。

特に芸人審査員と比べると、一般視聴者の感想は、
お笑いに関する経験不足故に論理的な審査基準を持たず、
匿名故に責任も伴わないため、
「面白い」だけでなく「この人たちはなんか好き」、「あいつらはなんか気に食わない」などの想いが無意識下で審査する材料に入りやすいため、
やはり「面白さ」のみを判断する大会には適さないケースが多いです。

Q.
「この審査員、他の審査員と全然違う採点してるじゃん!センスないからやめてほしいんだけどどう思う?」

A.
全員同じ審査をしてたら審査員は7人もいりません。
技術やセンス、その日の出来、各審査員の「特に評価したいポイント」が点数や票の差としてあらわれます。
専門家の多様な観点にこそ価値があるのであって、
他の人と違う評価をすること自体に問題があるわけではありません。

一方で自分と感覚が合わない審査員が居て、その審査自体に意見を言うのは良いと思います。
「他の人はみんな高い点をつけているのに、この人だけ低い点をつけてる。何か理由はあるのかもしれないけど、私個人の目から見てもこれは良い出来のネタだったし、この審査には納得がいかない」
というような。

Q.
「この人の審査基準不明瞭だし感覚的すぎ!こんなのいいの?」
A.
「審査基準を論理的に、具体的にしなければならない」「感覚的な審査より、基準を持った審査の方が良い」というのはあくまであなた個人の見解。

M-1は「どのくらい面白いのか」をはかる場であり、
ボケ一つにつき何点、この技術を盛り込めば何点…というような具体的な基準は、
必要と感じた審査員の方が自分の審査に盛り込めば良いだけで。

審査員に共通の審査基準として求められるのが「面白いかどうかを決める」だけであるために、
様々な個性を持つ審査員は自由な形で面白さを審査し見出すことができ、
芸人も、「面白さとは何か」の奥深さを探求しながらネタを作ることができるのだと思います。

細かい審査基準を持つ審査員もいれば、「自分の考える面白さ」を感覚的に求める審査員もいる、
色々な形がありそこに優劣はない、というだけで。

何より“お笑い”という人の感性に訴えかける分野である以上、感覚的な審査になるのはむしろ真っ当であるとは思います。

Q.
「そもそも審査員何人もいる?〇〇さんが1番センスあるし、その人だけいいと思う」

A.
まず1人の審査員が面白さの基準を設定して決め始めるのは非常に危険です。
例えば私が「じゃあ俺は笑いのセンスがあるし、俺一人で日本一面白い芸人を決めるわ」と言って、「うむ」と頷く方がどれほどおられるでしょうか。
「いやいや、お前が1人で何決めてんねん」「お前以外の人間の意見も含めて考えないとアンバランスで不公平な結果になるだろ」という話になりますよね。
これは芸人でも同様、
1人の価値基準に依存する審査は実は非常に不安定なものです。




また、特定の審査員Aを外して特定の芸人Bを審査員に加える、あるいは特定の芸人の意見のみ厚遇する、ということは、
「審査員Aを外すこと」と「特定の芸人Bを入れる(優遇する)こと」の双方であなた以外の芸人・大衆を納得させる必要があります。
あなた1人にのみ提供される料理にクレームを入れているのとは訳が違います。

他の人にも振る舞われる料理を食べて、「これは私の好みとか関係なくめちゃくちゃまずい!料理人を変えさせるレベル!」と厨房に殴り込んでいるも同然の意見であり、
ここまで動くとなると、当然他の芸人を推す視聴者や芸人からあなたに対し反発の声があがるでしょう。

そんなあなたが意見を押し通すには、
その審査員Aを認める「あなた」にどれほどの笑いのセンスがあるのか、
そして審査員を審査する能力がどれほど優れているのか、
という点を証明しなければなりません。

少なくとも視聴者よりも笑いに精通している芸人さんや作家さんが、審査員を決定している今の状態は自然な流れではあります。

ただ上述した通り「この人審査員になって欲しいなぁ」といった意見自体は良いと思います。
私にも審査員に復帰してほしい芸人さんがいますし、その人が1番審査基準が真っ当だと思ってすらいます。
ただし、その人がいない審査に価値がない、と言うつもりはありません。

「この人の審査基準が1番真っ当」という私の意見も、あくまでイチ視聴者の意見、
それ以上でもそれ以下でもないものだということを自覚しているからです。

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