高気圧酸素療法

最終更新:2026年8月18日

高気圧酸素療法(HBOT)は、加圧された専用チャンバー内で100%酸素を吸入し、通常より高い圧力下で体内への酸素供給や気体の挙動を変える治療法である。通常は2〜3 ATA(絶対気圧)が用いられ、単独用または複数人用のチャンバーで実施される。[1]

治療環境と定義

高気圧酸素療法では、周囲の大気圧より高い圧力に保たれたチャンバー内で100%酸素を使用する。100%酸素を通常の1気圧で吸入することや、身体表面へ酸素を局所的に当てることは、高気圧酸素療法には含まれない。[1]

作用の仕組み

圧力が上がると気体の体積が小さくなるというボイルの法則により、血液組織内の気泡を縮小させる方向に働く。また、気体の分圧が上がると液体に溶ける量が増えるというヘンリーの法則により、血漿中へ溶け込む酸素量が増加する。[1]

高い圧力下で100%酸素を吸入すると、不要な気体を体外へ排出しやすい圧力勾配が生じ、酸素の乏しい組織へ酸素が拡散しやすくなる。これらの作用は、減圧症や動脈ガス塞栓、一部の虚血性病態で利用される。[1]

主な利用対象

高気圧酸素療法が用いられる対象には、減圧症、空気・ガス塞栓、一酸化炭素中毒、ガス壊疽、壊死性筋膜炎、難治性骨髄炎、遅発性放射線障害や放射線性壊死、選択された創傷や熱傷などがある。適応となる病態と治療目的はそれぞれ異なり、疾患に応じた専門的な判断が必要である。[1]

エビデンス・科学的評価

高気圧酸素療法の作用は、圧力による気泡の縮小、不要な気体の排出を促す圧力勾配、血漿中の溶存酸素増加という物理・生理学的機序で説明される。臨床上の役割は対象疾患ごとに異なり、すべての病態へ一律に適用される治療ではない。[1]

安全性・注意点

中耳の圧外傷は、高気圧酸素療法で最も一般的な合併症である。中耳の圧平衡(耳抜き)がうまくできない場合は、耳の圧迫感や痛み、出血、鼓膜穿孔などが起こり得る。[1]
高い酸素分圧への曝露では酸素毒性が問題となり、中枢神経症状として視覚変化、耳鳴り、吐き気、筋のぴくつき、めまい、けいれんなどが生じることがある。長時間の曝露では肺酸素毒性にも注意を要する。[1]
未治療の気胸は絶対的禁忌である。また、加圧された酸素環境には火災・爆発の危険があるため、油類、化粧品、可燃物、着火源を持ち込まない厳格な管理が必要である。[1]

参考文献・参考情報

  1. NCBI Bookshelf: Hyperbaric Physics ↩本文

カテゴリ:呼吸 / 基礎概念 / 物理療法

タグ:HBOT / 酸素 / 高気圧酸素療法

知識マップ

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