【定義とは】人権侵害?身体拘束(身体抑制)とは【医療職としての意見】

医療・健康知識

みなさんこんにちはこんばんはゆきるりです。

107回看護師国家試験に合格し看護師として精神科に勤めました。

今回は身体拘束(身体抑制)について。

身体拘束(身体抑制)とは

あまり耳慣れない言葉ですね。

私のように精神科病棟に勤めた経験のある方をはじめ精神科に関わっていた方であればともかく、

日常生活でこの言葉に触れる機会はないかと思います。

身体拘束とは、精神科に入院中の患者に対して

①患者本人の生命の保護

②自他への重大な身体損傷を防ぐ

等を目的として行われる行動制限のことです。

例えば認知機能が低下している患者さんに、

転倒・転落、点滴チューブの自己抜去などのリスクが考えられる場合などに身体拘束を行うことがあります。

患者さん本人や周囲の人間を守るために、必要に応じ身体拘束を実施する、というわけですね。

身体拘束に際しての条件

世界保健機関は「精神保健法:10の原則」において、身体的抑制を行う際には以下を条件としなければならないと制定しています。

  1. 患者と代替手法について、話し合いを継続していくこと
  2. 資格を持った医療従事者によって、検査と処方を行うこと
  3. 自傷または他害を緊急に回避する必要性があること
  4. 定期的な状態観察
  5. 抑制の必要性の定期的な再評価。たとえば身体抑制であれば、30分ごとに再評価
  6. 厳格に制限された継続時間。たとえば身体抑制では4時間。
  7. 診療録への記載

個人の行動を拘束している以上、特に慎重に身体拘束の観察はしていましたし、それが適正であるかどうかは患者ごとに考える必要があります。

また身体拘束と一口に言っても、そのやり方次第では患者が中途半端に動けてしまったりと別のリスクが発生してしまうため、

拘束時にも細心の注意を払います。

身体拘束のリスク

個人の行動を制限している以上患者さんの尊厳という点はやはり考え続けなければならない点です。

「身体拘束は人権侵害だ」という声も上がっていますね。

身体拘束についての議論が深まっていくのは非常に良いことだと思います。

また身体拘束に関連する傷害に関するシステマティック・レビューでは、

身体拘束が死亡、転倒、傷害の重傷度、入院期間を延長させるリスクを高めることを見出しています。

身体拘束により活動量が低下し身体機能が落ちる、ということももちろん頭に入れておかなければなりません。



身体拘束の是非

さて色々な意見があがる中で、実際に働いていた側からすると「現状、リスクの大きいケースでは身体拘束はやむを得ない」というのが正直な想いです。

仮に身体拘束を解除した場合、やはり事故を起こすリスクも出てきますし、

状態によっては患者さん本人や周囲の人たちに危険が及ぶ可能性もあります。

仮に患者さんの身体拘束を解除した結果案の定事故が起きてしまった、

ではシャレになりません。

拘束がされていなかったために転倒や自傷のインシデントが起きてしまうこともあります。その後その件を巡って医療者側への訴訟が起きた、というのも珍しくない話ですね。

見守りを行う人員の問題もあり、

必要性のあるケースでの身体拘束はやむを得ない、というのが個人的な考えです。

またネット上では身体拘束についての色々な声が上がっていますが、

身体拘束という行為単体だけではなく、

医療者側にも立っての検討や、身体拘束に代わる対策の方向性・代案についての検討も、

セットで考えていただけると物凄くありがたいです。

例えば私は精神科の閉鎖病棟看護師として、

拘束具を付ける作業に臨んだり、一定の時間ごとに身体拘束中の状態確認をしてきましたが、

「人権侵害をしたい」「これは正義だ」などと思いながらそれらの仕事をすることはありません。

身体拘束をすることなく、患者さんが生活を送れるのであればそれに越したことは無いです。

私が過去に勤めていた病棟では、

本来身体拘束措置が取られている患者さんが、担当看護師が身体拘束を行い忘れた結果、

事故のインシデントが起きてしまったことがありました。

例えばこのケースに関しては、

身体拘束を行なっていれば事故を未然に防ぐことができていました。

しかし一方で、身体拘束をした場合には「人権侵害」問題が生まれます。

・身体拘束以外にどのような打つ手が考えられるのか

・他の手段がある場合、それはどの程度現実的に実施できる内容なのか、効果とリスクはどうなのか

など、考えなければならない点は山積み。

みなさんも、

「仮に自分が医療者という立場だとして、

自傷・他害・事故が起きる可能性のある精神科の患者さんに、

身体拘束をせずに安全に生活を送ってもらう方法」

について色々と考えていただけると嬉しいです。

一方でもちろん何でもかんでも身体拘束、というのも適切ではありません。

患者さんの状態を総合的に見て、身体拘束をすべきかどうかという判断を下す必要があります。

こちらも身体拘束をするにあたり、また身体拘束中もつぶさに状態を観察・評価し、その必要性について検討しています。

というわけで今回はこの辺りで記事を締めます。

また次回お会いしましょう、さようなら。

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